2018年4月17日火曜日

光延反応

みなさん、はじめまして。六角です。
備忘録的にはじまったブログですが「反応が上手くいかない!」と困っている若手有機化学者のお役に立てばと思っています。

記念すべき第一回反応はずばりタイトルにあるように「光延反応」です。
六角は日常的によく使います。

本反応はPPh3 /DEAD (diethyl azodicarboxylate)存在下 (最近は色々な組合せがあります)、アルコールと活性プロトンを有する種々の求核剤を脱水縮合させる反応です。
脱水縮合といいながらアルコールの酸素はPPh3に、アルコールのプロトンと求核剤のプロトンはDEADに移動する酸化還元縮合です。求核剤としては主にカルボン酸、フェノール、フタルイミドなどが用いられ、pKaが 10~13の求核剤では収率は低下し、pKaが13以上の求核剤では反応が進行しなくなると言われています。
4-aminophenol のpKa は10.3なのでぎりぎりアウトなんですかね。最近六角が類縁体を試して上手くいきませんでした。ともあれ光延反応は非常に信頼性の高い反応です。

光延反応を用いる利点としては
① 2級アルコールの立体反転が可能。
② マイルドな反応条件。
③ 汎用性が高い。
欠点としては、OPPh3やらDEAD-H2などの共生生物の除去でしょうか。PPh3/DEAD の組合せが一般的かと思いますが、六角的にはDEADよりもDMEADの方が分液のみで共生物のカスを除くことができ、精製がより容易なので好きです。以下六角の精製法について。

<精製Tips>

OPPh3の除去が面倒なことがありますが分液ーエバポ濃縮した後にEt2OとOPPh3の種結晶を加えるとOPPh3の結晶が得られるので一旦濾過した後、カラム精製をするとカラム精製中にOPPh3が析出しなくて安心です。EtOAc-Hexane 系だとOPPh3がカラム中で析出して大変なことになることがあるので手間を惜しまず除けるだけOPPh3を除いてからカラムしましょう。Et2O-hexane混合溶媒の方がOPPh3の回収率としてはいいかと思いますが、オイルになることが多い(個人的な印象)のでシンプルにEt2Oだけを用いることが多いです。

「TLC上でモノとOPPh3が被ってしまった!」という状況は多々ありますが、そんなときは DIOLカラムがおすすめです。溶媒の選択やグラディエントを試行錯誤するよりもシリカを変えた方が手っ取り早いです。「高くて買えない?」先生にお願いしてみましょう。

参考文献とか

◯ 新光延試薬 角田鉄人, 加来裕人, 伊東しょう TCIメール 2004, 121(PDF注意)

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